ポリエステルキャンバスバッグ
2025/1/8
いつもお世話になっている方に「面白い素材があるんですよ」と声を掛けてもらい見せていただいた素材がリサイクルポリエステルのキャンバス。岡山県倉敷市で旧型のシャトル織機でおりあげられた天然素材のようなメランジ感のある素材でした。しっかりと打ち込まれた素材で適度な凹凸感のある素材でした。
気になるので手元にサンプルを置いて、いつも見るようにしていました。素材サンプルを手元に置いたまま、しばらく経った時に、以前から懇意にしていただいていたFlathority(フラソリティ)さんから、何か一緒にできないかとお声がけをいただきました。
Flathorityさんはリーズナブルな価格で高品質なレザーグッズを作る東京の実力派ブランドで、以前から私も知っていたブランドです。色々とお話をしていくなかで、私がコンセプトとデザインを担当し、Flathorityさんは技術提案と製造を担当する、ということでプロジェクトをスタートすることになりました。
既に、現在、最高の素材と最高峰の技術で、美しく機能的であることをめざしてものづくりをしている「THESOLE」というブランドでバッグを扱っていますので、今回のこのプロジェクトでは、よりリーズナブルで使いやすく、機能性に富んだバッグつくりをコンセプトに決めました。
ブランド名は「THE SOLE bis made by Flathority 」(以降 bis)
「bis」はラテン語で、2つめとか、再び、という意味でTHE SOLEのセカンドラインという位置づけで誕生しました。
ここで、ずっと気になっていたリサイクルポリエステルのキャンバス生地こそこのbisのコンセプトにふさわしいものでした。さらにレザーと組み合わせることでより良い製品が生まれると思い、商品企画をスタートしました。
2025/1/14
理想的なバッグには、ハンドルの手持ち感がよく、剛性に富んだものであることと、底が硬いという二つの要素が重要だと考えます。デザインを優先するためにこの部分を省いたりすることもあると思うので一概に良くないというわけではありませんが、この二つの要素はbisにおいても、絶対に外せない要素でした。
私が知る限りですが、使い勝手ということを考えると、多くのバッグでこの二つの要素が欠けているように思います。ハンドルの剛性感がないと、ハンドルが伸びたり、変形して持ちにくくなることがあります。また、底が柔らかいと荷物を入れた際に変形しやすく形崩れの原因にもなります。
そのため、底には特注の芯材を使い、硬く仕上げることに決定しましたが、最大の難関はハンドルでした。bisのバッグはキャンバスとレザーのコンビで作ることを決めていたので、剛性感があって手持ち感が良いハンドルをどのようにして作るかということが課題でした。
ハンドルにかかる負担の方向を考えながら、変なシワが出にくいようにする為に革を選定していると、レザーが高価なものになってしまうのです。そうすると、今回のbisはリーズナブルな製品にしたかったので、理想的な価格でお客様に提供できないということになってしまいます。
非常に悩みながら素材を探しました。最終的にたどり着いたのがワークブーツに使われている型押しのレザーでした。ハリがあり、綺麗な表面感と繊維が詰まった頑強で、さらにグニャグニャ曲げても変なシワにもなりにくい革でした。ハンドルはこのレザーとキャンバスのコンビネーションにし、伸びどめ芯を使いました。素材選びと構造を突き詰めて考え、理想的なハンドルの形状を作り上げました。
バッグの本体は、表のキャンバス生地の内側に人工スエードをボンディングすることにしました。表と裏の生地とそれぞれボンディングすることで、生地にハリが生まれ強度が増す為、芯地となる副資材を省くことが可能になりました。芯材となる副資材を省くことで、極力内容量を確保することができ、さらにバッグ自体も軽くすることができます。生地のハリがあるので、直線を組み合わせたデザインでも作り上げた後に綺麗な膨らみ感が出るように、設計しました。バッグ内部もパイピング処理をすることで縫代が構造物として機能することも綺麗なフォルムとなっています。
ハンドルの取り付けも鞄が引きつらないように配置縫製して強度を増すようにリベットを打ち付けていますが、リベットは内側のポケット取り付けにも役立っています。
無駄を極限まで削ぎ落としながら都市生活に必要な収納や機能を残すことで、 使用する方のアイデンティティーを邪魔しないシンプルなプロダクトとなりました。