イントレチャート時計ベルト

2025/4/22

思い始めたのは十五年くらい前でしょうか。
時計のストラップの夏用にイントレチャート(メッシュ)手編みのベルトがあれば素敵だなと妄想していました。

昔、雑誌に掲載されていた腕時計の写真で見たことのあったストラップは 明らかに手編みで作られたものであり、形状から考えると手編みだと一目見てわかるものでした。

手がかりは記憶の中にある時計とストラップの写真だけ。

まずは素材の選定から始めました。薄くて丈夫で繊維密度の濃い革が良いのでは、と思い色々な素材屋さんや革に詳しい知人に色々と相談して浮かび上がったのがカンガルーレザーでした。




2025/4/28

カンガルーレザーのサンプルを手に入れ、そこから試行錯誤が始まりました。

カンガルーレザーは薄くて強くて伸びにくいという特性をもっており、スポーツ用のスパイクなどに使われるものです。 その革を使ってできるだけ薄く作成することを考えました。

構造としては手編みの美しさを最大限に生かすため、引き通しと言われるタイプのストラップとすることに決めました。 尾錠をつける部分だけはメッシュではなくなりますが、それ以外の部分は手編みメッシュの魅力を最大限に表現できるということでこの形状としました。

薄く作るために、まずはカンガルーの革を細く切って革一枚のみで張り合わせをせずに試編するも、それでは薄すぎることがわかりました。 貼り合わせにするにしても紐の端にきれいにコバ塗りができないことが判明。 紐の構造を突き詰めて、ようやく辿り着いたのが、中に芯材を入れて革を巻きつけるという方法でした。

しかし、プロトタイプを作って試着してみると問題が発生しました。 カンガルーの革の色落ちが激しく、着用していると汗で非常に簡単に色落ちしてしまうことが判明しました。

また、紐の厚みを調整するにしてもどうしても分厚くなってしまうために、今度は再度マテリアルをリサーチすることになり、色々な革が候補に上がりフランスHASS社のヴォーエプソンという型押しのカーフにたどり着きました。

色落ちしにくく、さらに薄く剃ることが出来る。
細かい型押しがきれいな表情で編み込みも美しい仕上がりになり、ようやく完成しました。