2025年 6月 10日
THE SOLEのベルトコレクション
服好き、革好き、時計好き。
つまり隙なし!?
THE SOLEのベルトコレクション
Masterplanが誇る名品を構成する〝5つの要素=5 Elements〟を、編集者・山下英介が解き明かすこの連載。今回はTHE SOLEがこだわり続ける、ベルトについて取材しました。
そんなに頻繁に買い替えるものじゃないから今まで気付いていなかったけど、最近ベルト、お高くなってますよ(涙)! 靴やバッグがこれほど高騰しているご時世なんだから当然っちゃ当然ですが、今やメゾンブランドならカーフでも10万円超えは当たり前。
でも値上げよりも問題なのは、ベーシックで上質なものが高価格ゆえにお店から姿を消して、価格を抑えるために露骨にクオリティを落としたモノばかりがマーケットに増殖していること。いいモノ好きなぼくとしても、さすがに数十万円するベルトは買えないけれど、さりとてチープなベルトは許せない・・・!
そこで今回のお題は「ベルト」。業界随一のレザーフェチで知られる神藤光太郎さんは、このご時世どんなふうにベルトと向き合い、どんなものづくりをしているか? 伺ってきました。
1.
カジュアルから冠婚葬祭まで!
こだわりのレザーラインナップ
「ぼくがコロナ禍のときにマーケットを見渡したときに、いちばんみんなが力を入れてなくて、自分がいいものをつくれるなと思ったのがベルト。『THE SOLE』というブランドは、このダブルリングのクロコダイルベルト1本からスタートしたんですよ」という神藤さん。それだけに、ベルトに対する思い入れは深く、適正価格で10年は使えるものにこだわっているそうです。
当然ですが、やっぱりベルトにとって一番大切なのは帯の素材。東京の下町にあるプレシャススキン専門のタンナーでなめした、マット仕上げのナイルクロコダイル(写真左)。アニリン染料で透明感ある仕上げにした、オリジナルの日本製コードバン(写真中左)。そしてヴィンテージショップでしか見たことがない、メッシュ編みにしたオイルドアリゲーター(中右)。わざわざオリジナルの色で染め上げた、ほかのどこにもないテラコッタカラーのクロコダイル(右)・・・。
とにかく「THE SOLE」のベルトは素材のバリエーションが豊富! 冠婚葬祭で使えそうなブラックのボックスカーフも、とびきりいい革で揃えているから、おそらく男のライフスタイルにおける全オケージョンをカバーできると思います。
しかもファッションの潮流を知り尽くした神藤さんがディレクションするわけだから、当然〝帯幅〟が適切なんですよね。「素材はいいんだけど、このパンツに合わせるにはあと2ミリ細かったらな〜」というストレスがない。これはとっても大切なことですよ!
2.
オイル仕上げの裏地で、
しなやかさと締め心地を追求
長年インポートビジネスに携わって、ヨーロッパを中心とした世界の一流品を買いまくって使いまくってきた神藤さん。そんな彼から見ると、国産のベルトにはいくつかの不満要素があるそうです。そのひとつが〝硬さ〟。 要因のひとつは裏地にあって、国産のベルトの多くには裏地に硬質かつドライなヌメ革を使っているため、新品時では海外のベルトのようなしなやかさが表現しにくいらしいのです。そこで神藤さんはオイルを浸透させたしっとりとした質感のレザーを裏地に採用することで、その不満を解消。最初から着け心地や締め心地もいいし、表情自体も実にいい雰囲気です。これは盲点だったかもしれない!
3.
〝角を落として〟
インポートのムードを演出
ヨーロッパのベルトの柔らかな表情が大好きだという神藤さんが、譲れなかったもうひとつのポイントが、コバの仕上げと表情です。きれいに磨くことは当然なのですが、大切なのはエッジの厚み。
国産のベルトはここをフラットに仕上げがちなのですが、「THE SOLE」の場合はコバ部分を少し薄くなるように仕上げています。イタリアの優れたテーラーが仕立てたスーツって、どこにも〝角〟が存在しないのですが、考え方としてはそれと同じ。この小さなひと手間が、ベルトに立体感と色気を産むんです。
4.
時計マニアだからつくれた!
真鍮削り出しバックル
神藤さんといえば知る人ぞ知る機械式時計愛好家。間違いなくファッション業界では最もマニアックなお方です。実はぼくは神藤さんからとある名作時計を譲ってもらったこともあるのですが、「THE SOLE」のベルトのバックルをよ〜く眺めていると、あれ、なんだかその時計の尾錠にちょっと似ているぞ・・・!?
「そうなんです(笑)。うちのベルトのバックルは真鍮の削り出しが多いんですが、ヘアライン仕上げとポリッシュ仕上げを組み合わせることで、陰影をつけて立体的な光沢を表現している。これは完全に機械式時計の考え方で、より所有したときの満足感につながるんじゃないかな、と」(神藤さん)。
メタルのバックルなんてどれも同じと思っている人もいるかもしれないけど、真鍮か合金か、削り出しか鋳造か、などその素材や仕上げには様々な選択肢があり、それによって表情は大きく変わってくる。
ファッション業界の人でもその点は無頓着だったりするのですが、神藤さんはこだわり抜く。これはファッションじゃなくて機械式時計マニアならではの視点です!
5.
摩擦係数を高くして
緩みにくいリングベルトに
神藤さんが「THE SOLE」で初めてダブルリングベルトをつくるときに、一番こだわったのが〝締め心地〟と〝緩みにくさ〟だったとか。そういえばダブルリングベルトって、見た目はカッコいいけどすぐに緩んで、ときには使いものにならなくなるケースも多いですよね。
そこで神藤さんは、リングバックルに通す折り返し部分の革を薄くするとともに、真鍮製のリングに厚みをもたせることで、理想的な締め具合を実現。さらに念には念を入れてリングの表面をサテン仕上げにすることで、さらに摩擦係数を高めています。
実際に締めてみるとレザーがリングにキュッと絡まり、ピタッと止まって容易には動かない。ダブルリングベルトの宿命ともいえる緩みにくさの悩みは、かなり解消されていると思います。
このダブルリングベルトに象徴されるように、「THE SOLE」のベルトは、そんな神藤さんの「ちょっとやりすぎちゃうか?」レベルのこだわりが詰まった、最高のスタンダード。神藤さん自身は「適正価格です」とはいうものの、昨今の状況を知っていたら驚くくらいにリーズナブルな価格も、そのサービス精神の現れですよね!?
個人的には2.5㎝幅のアリゲーター製プンターレベルトが気に入ったぼくは、これを着けて撮影に臨んだのですが、なぜか着けたまま帰宅してしまいMasterplanの皆様にご迷惑をおかけすることに・・・。もちろんわざとじゃないんですよ! それほどまでに着け心地が自然だったということで、ご容赦ください。
PROFILE
山下英介
やました・えいすけ/1976年埼玉県生まれ。『LEON』編集部を経て、『MEN’S Precious』のクリエイティブディレクターを務める。現在ウェブメディア「ぼくのおじさん」編集人。
https://www.mononcle.jp/